子どもに一緒に行こうかと言っていた紀伊半島一周。普通列車だと丸1日がかりとなり、残念ながら子どもは「しんどそう」と行ってくれなかった。
紀伊半島の白浜〜多気は夜行列車か、昼行でも寝ていたり立席で景色が見えなかった区間が多く、海沿いなのにあまり車窓の風景が記憶に残っていない。
5時頃に自宅を出て、和歌山→三重の方向だと帰る時間もさほど遅くならないので、行ってみた。
自宅の最寄駅を5時過ぎの、予定より30分ほど早めの列車に乗れたので、大阪、天王寺、和歌山と乗り継いで御坊まで行ってしまう。車内で接続を調べていると、御坊で紀州鉄道に乗り換えて往復できることがわかったので、行ってみる。

御坊駅0番ホーム。紀州鉄道の西御坊行。
駅を出てすぐ左に急カーブする。ここは以前レールバスが脱線したことがあるので、かなり徐行して通過。
元は御坊臨港鉄道で、昔は貨物列車も走っていたという面影はほぼない。

まあ、この終点西御坊駅のところで、手前側が斜めに開けているのが、貨物列車唯一の痕跡か。何と駅の途中で貨物線が分岐していた(廃線跡あり)のだ。西御坊駅では気動車がポイント上で停車していたという、何とも専用線に無理に旅客列車を走らせたような路線だった。

折り返し停車中の線路の先には、もう1駅先の日高川駅まで伸びていた線路が残されている。但し、西御坊を出てすぐの小川にかかる橋はなく、住宅が線路敷地に掛かって建てられてしまっているが、意外に線路が残っている。

見えにくいけど駅舎の入り口に「NISHIGOBOU STATION」(クリックして拡大していただければ見えます)

達筆の毛筆駅名版と表示は立派だが、

低い天井板がちょっと廃屋を思わせるような廃れっぷりだ。ただ、この西御坊駅に関しては「昭和の時代からこうだった」ので、メンテナンスとしてはきちんと整備されているのかもしれない。

紀伊御坊駅の予備車?片方は休車かもしれない。

こちらはもう保存車ではないかと思う。確か元大分交通耶馬渓線の気動車だ。

御坊駅に戻ってきた。

紀伊田辺行に普通列車に乗り換え。紀勢本線はほぼ227系だけになってしまった。新車なのでロングシートだが、乗り心地は良い。
紀伊田辺ではすぐ新宮行に接続。この後は2時間以上の長旅なのに、飲み物を買う時間もない。

と、思ったら白浜駅で約30分の長時間停車。改札を出て売店で買い物。新宮発のオーシャンアローが走り抜けていった。

海沿いを行く紀勢本線は景色が良い。特に見老津〜新宮は磯に沿って走る区間が長く、見応えがある。

カーブした連続ガーダー橋で古座川を渡る。

紀伊田辺から先は単線なので、対向列車待ちの停車が結構あった。大きな駅ではなかったので、ホームに出ていた程度だが。

新宮発のパンダくろしおと行き違い。

新宮駅手前の徐行区間。磯の波を被るような場所を走っている。

この後は七里御浜に続く広い浜辺沿いを走り、少し陸側に曲がると新宮駅。

新宮駅では30分ほど時間があったので、天然記念物「浮島の森」を見学。

左の森がそのまま巨大な浮島で、さすがに大きすぎて風で移動したりはしないと思うが、水位によって上下するらしい。

橋を渡って浮島の内部へ。

浮島内部はこのような湿原状態。寒い地域だと枯れた植物が完全には分解されれずに泥炭の湿原となるが、ここは低栄養の湧水に浸かっているため分解が進みにくいのだろうか。

浮島内をこのような遊歩道が通っているのだが、
下が硬い地面ではないので、揺らすと波ができるし、沈まないよう浮きがついている。

「蛇の穴」という底なしの穴。

台風で倒れた杉の倒木なのだが、下が柔らかいため樹が折れない。そのため、倒れた後から幹が上に向かって曲がって伸びている。受付の方に伺ったところ、杉は根が浅く倒れやすいそうだ。一方クスノキは直立して高く伸びていた。

浮島保存のためだと思うが、浮島湿原の流出口で水位が調整されている。

駅からも近く、30分程度でも十分見て帰れるので、新宮で時間ができた方にはオススメしたい。
駅前の徐福寿司でさんま寿司を購入。まだ腹が減っていないのと、ロングシート車ばかりなので、後ほど遅めの昼食としたい。

普通伊勢長島行のキハ25。これもロングシートだが、馬力があり乗り心地も良い優れた車両。
新宮駅を出るとすぐ、熊野川を渡って製紙工場への専用線が延びていた鵜殿へ。

キハ85系の「南紀」と行き違い。

伊勢長島駅に到着。実態は1時間を超える長時間停車なのだが、無人にするため一旦客を降ろして扉を閉鎖する。

紀伊長島駅前。駅舎の向かいに牛乳店の売店、斜向かいに寿司店(現在持ち帰り専用)。数分歩くとパン屋、ラーメン屋、スーパー「オークワ」といろいろある。但しご当地のものは寿司店のサンマ寿司くらいだ。サンマ寿司と焼きサンマ寿司のセットを購入し、これは土産にして新宮で買ったサンマ寿司を先に駅ホームでいただく。シャリに少し柑橘系の味がついていてさっぱりしたいい感じ。

大内山駅の桜。

終点の多気駅で4本の列車が待ち合わせとなり、3方向へ出発していく。

亀山行も同じキハ25。途中対向列車の遅れで数分の遅れが生じたが、亀山、柘植、草津と乗り換えて21時までには帰宅した。
ほぼ同じ行程をたどられる方もいると思うので、車窓について付け加えておきたい。
海沿いを走る紀勢本線だが、新宮以西では書いたように見老津〜新宮の車窓が良い。曲線とトンネル、橋梁が続くので前面展望も良いが、海側の磯の風景が素晴らしい路線である。串本以西では和深のあたり。串本を過ぎると橋杭岩が見えるが、海との間に建物があるので良い眺めとはいえない。
古座川橋梁を渡り、その後はリアス式海岸で海とトンネルが繰り返され、三輪崎〜新宮で、磯から砂浜に変化する。
新宮を出たら熊野川橋梁。その後は砂浜から少し離れるが、新宮側は斜面で、熊野市側は海岸砂丘で小高いところを走る区間も多く、海はちょくちょく見える。
熊野市〜尾鷲は最後の開通区間で、長大トンネルで山を抜け、漁村と漁村をつなぐように走る。大曽根浦あたりの景色が一番良いかもしれない。尾鷲〜紀伊長島は内陸部が多くなる。
紀伊長島を過ぎると、Ωループを描いて山を登っていく。トンネルが多く、下の線路は見えないが、左側に注意していると紀伊長島の街を見下ろせる場所がある。